発足したデジタル庁の目標としている行政のデジタル化は、2001年のe-Japan戦略を経て、2006年のIT新改革戦略、2013年の世界最先端IT国家創造宣言、2018年からのデジタル・ガバメント実行計画など、ここ20年来の取組みである。
戦略や実行計画の一部は目標を達成して成果を得ている一方で、多くは失敗しては新たな戦略計画を設定する繰り返しであるとの指摘は否めない。
今回、「だれ一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を目指し、大胆かつ迅速に、また継続的にデジタル改革を推進するとのデジタル大臣のメッセージが発出された。新生デジタル庁の大志が実現されることを大いに期待したい。
ただ、ふと思うのは、これまでの「失敗と新戦略」の繰り返しの歴史と何が異なるのかである。今回も同じ「失敗と新戦略」を繰り返すことが図らずも予想されてしまう。
今度こそ成功させるために必要なのは何か。それは、PDCA改善サイクルによる失敗から学ぶ謙虚な姿勢であろう。
デジタル・ガバメントの業務遂行状況を振り返り、現場レベルでは、成功プロジェクトは何が良かったのか、失敗したプロジェクトは何が問題だったのか、導入後レビューをしっかり行うことである。また、幹部レベルでは、設定したデジタル戦略や実行計画について、実現した項目や実現できなかった項目についてしっかりと振り返り、その成功要因や課題を認識することだと思う。
失敗した項目については、その原因について「なぜ」の繰り返しによる真因へ深掘り(評価)を行い、その真因を取り除く対応策を考え、次なる戦略計画やプロジェクト計画に反映するという再発防止の対応が極めて重要である。これまでの失敗を失敗として正しく認識し、それらをしっかり反省し、次の成功に繋げる努力に向ける必要があるのではないか。
このように、新しいデジタル監が中心となって、「戦略策定、実行、振り返り、改善」というマネジメントのPDCA改善サイクルを効果的に回していくことがデジタル庁の最重要課題であろう。
また、デジタル大臣等のリーダーシップにより、国民等ステークホルダーのニーズを評価して、デジタル監等事務方へ進むべき方向性を示し、デジタル監、事務方の業務遂行をモニタリングするという、ガバナンスに関する「評価、方向付け、モニタリング」の価値創出サイクルの実践も重要である。特にモニタリングの結果をしっかりと国民等ステークホルダーと共有する透明性の発揮がデジタル庁の成功には欠かせない。